首の症状
頚椎症とは
頚椎症とは、加齢に伴う頚椎の老化や変性によって頚椎の骨が変形する疾患です。この変形が進むと、骨棘と呼ばれる骨の突起が形成されます。特に脊柱管がもともと狭い人などは、この骨棘が脊髄や神経を圧迫し、手足のしびれや麻痺といった症状が現れることがあります。
頚椎症の症状
症状としては、片側の腕や手にしびれや痛みが現れることが一般的です。また、場合によっては両手がしびれることや、細かな動作(箸の使用、ボタンを留める、字を書くなど)が難しくなったりします。さらに、両足が足先からしびれてくる、足底に違和感を感じる、歩行が不安定になることもあります。軽い段差でつまづきやすくなったり、転倒しやすくなることもあります。中には、比較的軽い外傷後に突然、四肢麻痺などの重篤な症状が発生するケースもあります。
頚椎症の原因
頚椎症は、首にかかる負荷が原因で椎間板がすり減ったり、損傷したりすることで発症リスクが高まります。以下の要因が、特に発症リスクを増加させる原因です。
- 姿勢が悪い
- 長時間のデスクワーク
- 重い物を持つ習慣
- うつぶせで寝る
- スマホを長時間使用する
頚椎は、本来緩やかなカーブを描いており、頭の重さをうまく支える構造になっています。しかし、首が10度前に傾くと負荷が1.5倍、30度傾くと負荷が3倍に増加します。デスクワークをしている方や中高年に頚椎症が多いのは、悪い姿勢によって顔が前に出やすいことが一因です。
頚椎症の治療方法
- 保存療法
軽度のしびれなどの症状がある場合は、安静を保ち、薬の服用や痛みを和らげる注射(神経ブロック・硬膜外注射)、カラー装着や牽引療法などが行われます。 - 手術療法
四肢に麻痺がある場合や、上肢の痛みが日常生活に影響を及ぼしている場合、また神経の麻痺が進行している場合(特に排尿・排便に困難を伴う重症例)には、手術を行って神経の圧迫を解消し、症状の改善や進行を防ぐことが必要です。
頚椎症性神経根症とは
頚椎症性神経根症は、20~40代の方によく見られる疾患です。
首の骨に負荷がかかり続けることにより、椎間板が変性(頚椎症)し、頚椎にある細いトンネル「椎間孔」が狭くなり、神経根が圧迫または刺激されることで、肩や腕の痛みや痺れといった症状をきたします。
頚椎症性神経根症の症状
首から肩、手指にかけての痛みやしびれ、脱力感(力が入りにくい)を感じることがあります。
頚椎症性神経根症の原因
頚椎のクッションの役割を果たしている椎間板は、20歳を過ぎると水分が失われ、コラーゲンの変化によって弾力性が低下します。これによってひびが入ったり、徐々に潰れたりするなどの変性(老化現象)が始まります。
椎間板の変性は一般的な現象で、これ自体は病気ではありません。ただし、脊柱管や椎間孔が狭くなり、脊髄や神経根が圧迫されると、症状が現れ、病気と診断されます。
骨棘は頚椎以外の部位でも、負担がかかることで形成されます。姿勢の悪さ、慢性的な炎症、関節の摩耗なども骨棘の形成に寄与します。
デスクワークやスマホの使用により首が前に傾くと、後頚部に大きな負担がかかり、骨棘が形成されやすくなります。また、激しいスポーツや重い労働を行う方も同様に首に負担がかかり、骨棘ができやすくなります。
頚椎症性神経根症の治療方法
多くの場合、手術を伴わない保存療法が第一選択となります。3週間から数ヶ月以内に症状が改善されることが一般的です。この間、薬物療法やリハビリ、ブロック注射を使って痛みをコントロールします。
- 保存療法
通常、手術を行わない保存療法が第一選択となります。症状の重さに応じて消炎鎮痛剤を処方し、これで改善が見られない場合は、痛みの原因となっている神経に直接ステロイドと局所麻酔薬を注射します。これにより、神経の炎症を抑えます。
頚椎椎間板ヘルニアとは
頚椎椎間板ヘルニアとは、首の骨の中ある「椎間板」の中身が外に現れて、痛みやしびれが生じる整形外科疾患です。首の骨は1番から7番までありますが、特に5番目以下の骨の間でヘルニアが起こると、神経症状が出ると手腕の感覚が鈍くなったり、握力が弱くなったり、物を握れなくなることもあります。
頚椎椎間板ヘルニアの症状
頚椎椎間板ヘルニアでは、次のような症状が見られます。
- 手や腕のしびれ
- 手先の感覚の低下
- 握力の低下
- 複雑な動作が困難になる
首の神経は手や腕の動きを制御しているため、ヘルニアが起こると手や腕に症状が現れます。また、重症化すると次のような症状が現れることもあります。
- 膀胱直腸障害
- 歩行障害
- 日常生活動作の制限
膀胱直腸障害は、尿や便を出す機能が障害される状態です。 また、筋肉の調整ができなくなることで歩行が困難になる場合もあります。
頚椎椎間板ヘルニアの原因
頚椎椎間板ヘルニアが起こるのは、下を向く作業が多かったり、姿勢が悪いことが原因とされています。
スマホやPCのデスクワークなど、長時間下を向く仕事や趣味により、徐々に椎間板にストレスがかかり、髄核が飛び出してしまいます。
また、加齢により椎間板がもろくなり発症することもあります。
高齢の方やデスクワークをする方は、頚椎椎間板ヘルニアにかかる可能性が高くなることを覚えておきましょう。
頚椎椎間板ヘルニアの治療方法
保存療法で経過を見る場合は、薬物療法により痛みを抑えながら、症状が自然に落ち着くのを待ちます。その間、リハビリテーションによる治療を行い、首周りの筋肉を鍛えたり、緊張を和らげたりして症状を緩和します。
痛みが強く改善しない場合には、神経に対する「ブロック注射」を行い、痛みやしびれを軽減させることもあります。
むちうちとは
むちうちとは、予期せぬ大きな力が大きく首にかかり、鞭のようになることによって生じる症状を総称したものです。医学的には、「頚椎捻挫」「頚部捻挫」「外傷性頚部症候群」などと呼ばれます。
むちうちの症状
むちうちでは以下のような症状が見られます。
- 痛み
(首の後・前・側面、頭部、頚椎、腕) - こりや重さ
(首、肩、背中) - 首を動かしにくい、うまく動かない、動かすと痛い
- めまい、ふらつき、目のかすみ、目の疲労感
- 吐き気
- 耳鳴り
- 握力低下、力がうまく入らない
- 足や指先の麻痺
- 倦怠感
- しびれ など
むちうちの治療方法
むちうちは軟部組織の損傷であるため、捻挫と同様に冷却することで痛みを緩和し、腫れや炎症を抑えます。急性期に温めてしまうと逆効果のため、温湿布はしないようにしましょう。
整形外科を受診した場合、効果的な痛み止めなどの処方が可能です。ただし、痛み止めは痛みを緩和するためのものであり、治癒を促進させるものではありません。 さらに、首への負担を軽減するために、頚椎カラーというコルセットを使用する装着具療法を行うこともあります。
頸部のリハビリテーション
頸部のリハビリテーションの目的は、首の柔軟性や可動域の改善、筋力強化、姿勢の改善などにより、日常生活の質を向上させ、症状や機能の改善、再発の防止を図ることです。頸部の後ろには脊柱管と呼ばれる神経の通り道があり、放置しておくと首回りの痛みだけではなく、目眩、頭痛、睡眠障害、手指の痺れや筋力低下といった様々な症状がおこることもあります。
頸部のリハビリテーションの具体的な目的には、体幹筋力強化による姿勢の改善、頸部・肩甲帯筋力強化による前方視の獲得、ストレッチによる姿勢や柔軟性の改善、むち打ち損傷(頸椎捻挫)による痛みや感覚障害の増悪防止、活動量減少による全身の筋力低下と持久力の低下防止、手指の巧緻機能(細かい指の動きが要求される運動)と感覚の改善などです。
リハビリテーションには関節可動域訓練、筋力増強訓練、ストレッチングやマッサージ、装具療法、物理療法、日常生活指導、セルフエクササイズ指導等を症状に合わせて行います。
特に現代社会ではスマートフォンやパソコンが普及したため、一般にスマホ首(ストレートネック)と呼ばれる、姿勢の歪みに起因した症状をきたす疾患も多くみられるため、日頃からの継続したセルフトレーニングが重要となりますが、誤ったトレーニングを行うと悪化させる恐れもあるので、お近くの整形外科で正しい方法を学ぶことをお勧めいたします。