膝の症状
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、膝関節のクッションである関節軟骨が、長年の使用や加齢による摩耗で劣化し、痛みや炎症、関節の変形を引き起こす病気です。ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の主要な原因にもなっています。この病気は男女比が約1:3で、特に閉経後の女性に多くみられます。閉経後のホルモンバランスの変化が影響していると考えられています。
変形性膝関節症の症状
初期症状は、椅子から立ち上がったり、歩き始める際に膝の痛みが生じることです。休息をとると痛みが軽減することもありますが、進行するにつれて階段昇降や正座が難しくなり、膝がまっすぐに伸びなくなります。また、関節に水が溜まることがあり、O脚やX脚といった変形を伴うこともあります。歩行距離が短くなり、膝崩れが起こることもあります。良い時と悪い時が数ヶ月単位で繰り返されますが、全体的に見て症状は進行していきます。
変形性膝関節症の原因
この病気は主に一次性変形性膝関節症とされ、明確な原因がない場合がほとんどです。しかし、女性では閉経に伴うホルモンの減少がリスクを高めていると考えられています。その他、加齢により軟骨や骨密度の減少、筋力の低下が進行の要因とされ、肥満や過去の膝の怪我もリスクを高めます。骨棘形成や軟骨の破壊、靭帯・筋肉の弱化などが進行すると治療は困難になるため、予防と早期治療が重要です。
変形性膝関節症の治療方法
初期の治療は主に薬物療法とリハビリテーションです。痛みが強い場合には、消炎鎮痛剤やヒアルロン酸注射が用いられます。
膝靱帯損傷とは
膝の靱帯は関節を安定させる役割を担っており、強い負荷や衝撃によって損傷することがあります。多くの場合、スポーツや交通事故などが原因です。部分的損傷や断裂に分かれ、症状の程度もそれによって異なります。
膝靱帯損傷の症状
靱帯の損傷によって関節が不安定になることがあります。軽度であれば一時的な痛みのみですが、断裂が起きると強い痛みと膝の不安定感を伴い、日常生活にも影響を及ぼします。歩行時に膝が崩れるような感覚もみられます。
膝靱帯損傷の原因
靱帯損傷は、接触型と非接触型に分かれます。接触型はスポーツや事故で直接膝に衝撃を受けるもので、非接触型は急な方向転換やジャンプの着地などで発生します。
膝靱帯損傷の治療方法
軽度の損傷であれば、装具による固定やリハビリによって回復が期待されます。痛み止めの内服や注射も行われます。
半月板損傷とは
半月板は、膝の関節内でクッションの役割を果たすC型の組織です。スポーツや事故、加齢による負荷で損傷することがあります。
半月板損傷の症状
半月板損傷では、膝の曲げ伸ばしが困難になり、クリック音やゴリッとした感覚を伴う痛みが生じます。半月板の一部が引っかかると、膝が動かなくなるロッキングという症状が発生します。
半月板損傷の原因
膝への過度の圧迫や捻りが原因で、半月板は損傷します。特に内側側副靭帯や前十字靭帯の損傷を伴うことが多いです。
半月板損傷の治療方法
膝の安静が基本です。炎症を抑えるために湿布や内服薬が用いられ、膝に溜まった液体は吸引します。
膝関節のリハビリテーション
膝関節における保存療法の目的は、痛みをコントロールし、膝関節の機能を最大限に維持・改善することにあります。膝関節の痛みを放置することや、痛みをかばった状態あるいは周囲の筋力バランスや動作バランスが大きく崩れた状態を放置し続けることは、膝関節痛の悪循環に陥るだけでなく、他の部位の痛みを誘発することが多いため、早期から適切なリハビリテーションを行うことが必要です。
膝関節の痛みの要因となりうる組織は、骨軟骨・軟骨下骨・滑膜・半月板・靭帯・関節包・筋・腱・脂肪体など様々であり、その程度も人により異なります。そのため、疼痛誘発部位を鑑別・限局化し、主訴や痛みの程度・種類・発生してからの経過などを踏まえた上で、的確なリハビリテーションを実施していくことが重要となります。
膝関節疾患に対するリハビリテーションには、関節可動域、筋力増強、ストレッチング・マッサージ、患部外トレーニング(動作練習・体操等)、装具・テーピング療法、物理療法、日常生活指導、セレクトトレーニング指導などがありますが、痛み等の各種症状は非常に個人差が大きいため、状態・時期・個性に応じたプログラムを選択することが重要です。
膝関節障害の治療において、すべての膝関節機能を正常化することが目的ですが、機能の正常化と関節を正常状態に戻すこと(構造の正常化)は、本質的に異なることには留意する必要があります。関節の治癒とは、一定の治癒期間を経て、組織の反応が機能的に安定することであり、これは構造的・組織的に正常化は必ずしも同じではないということです。また、治療効果は、個性・属性により個人差があることにも留意が必要です。